ミュージカル Feed

2008年3月 9日 (日)

「ベガ−ズ・オペラ」

観劇日…2008年2月9日
劇場…梅田芸術劇場メインホール


 1728年に初演され、世界最初のミュージカルと呼ばれるベガ−ズ・オペラ。

  舞台は18世紀の劇場をイメージした装置で飾り付けられていました。
舞台上の両サイドにも客席が設けられ、芝居が始まる前に近藤洋介さんに指名された観客が掃除させれたりしていました。

 乞食劇団に頼まれて劇場を貸すことになったと劇場の支配人(近藤洋介)が挨拶を始めます、すると役者たちが観客席の間を通って舞台の上に上がってきます。

 芝居はピーチャムの家から始まります。ピーチャムは盗品の仲買をしていたのですが、裏では役に立たなくなった盗人を密告して一人当たり40ポンドの賞金を稼いでいたのでした。
 ピーチャム夫婦にとって善悪の基準は金になるかどうかなのです。その二人にとって娘ポリーの行く末が心配の種でした。
父親は独身を最大に利用すべきだと言い、母親は結婚していた方が男どもを操れると考えていました。
ところがポリーは街道の追剥ぎキャプテンマックヒースに恋していたのです。
そのことを知った夫婦は、マックヒースが夫婦にとって損にしかならないと判断し、マックヒースを密告するのでした。
ポリーは家の中にかくまっていたマックヒースを逃がします。

しかし女好きのマックヒースは行きつけの店に馴染みの女たちを集め酒盛りを始めてしまいます。
そしてその中の一人とベッドを共にしている時、その女に密告されていて、捕まってしまったのでした。

 監獄に連れて来られたマックヒースは、監守長の娘ルーシーと再会します。
ルーシーもマックヒースの愛人で妊娠していました。
マックヒースの不実を責めるルーシーから逃れるため、指輪を送り結婚しようと口説きます。
そこへポリーが面会に現れ、三角関係がばれてしまいました。
監獄にポリーが行ったことを知ったピーチャムはポリーを連れ戻しに現れます。

 マックヒースと二人きりになったルーシーは、マックヒースに懇願され手錠の鍵を外して逃がします。
マックヒースによって娘を愛人された二人の父親は互いの利益を守るため、マックヒースを捕まえることにします。
相変わらず逃げる途中で女の元に立ち寄ってしまったマックヒースは捕らえられ、絞首刑に処せられてしまいました。

 このシーンに再び支配人が現れ、絞首刑のシーンで芝居を終わらせてはならないと告げます。劇作家兼演出家の男は抗議しますが、マックヒースを演じた男がアドリブでなんとか繋いで賑やかに芝居は終わります。

 「ベガーズ・オペラ」は1728年に初演されているので、その当時の作劇通り、主役のマックヒースがありえないほど女にもて、危機一髪になっても女たちに助けられて逃げ延びる、八面六臂の活躍をします。

 盗賊の頭が主人公ということで社会風刺の効いた作品として欧米では有名だったのかもしれませんが、日本では「ベガーズ・オペラ」を下敷きにして作られたブレヒトの「三文オペラ」の方が上演回数も多く、私も何回か観劇したことがあります。
 「ベガーズ・オペラ」を見たことで、「三文オペラ」の見方が変わるような気がしてきました。

 出演者の中では、オペラ歌手の森久美子さんがさすがに他を圧倒する歌唱力で、森さんの生の歌声を聴くことができて、とても幸せな経験ができたと思いました。ポリーの母親役もよかったのですが、後半マックヒースを売る古着屋の女の古怪さがおもしろかったです。

 主役の内野聖陽さんは、座長にしては控えめな感じがあり、最後に舞台上の俳優や観客と踊るところでも、舞台の後ろの方にいたりして、自分が舞台を引っ張るというよりもキャスト全員で作っていくというような意識があるのかなと思いました。内野さんの主演の舞台としては、メタルマクベスの方が私としては好きだなと思いました。
 

2007年3月 5日 (月)

「ミュージカル マリー・アントワネット」

観劇日…2007年2月10日
劇場…梅田芸術劇場


 遠藤周作原作「王妃マリー・アントワネット」を「エリザベート」のミヒャエル・クンツェ、シルヴェスター・リーヴァイによってミュージカル化した作品。

 この作品は、王妃マリー・アントワネットと庶民のマルグリット・アルノーという二人のM・Aを対比させて進んでいきます。

 マルグリット・アルノーは最下層の少女で、町で金持ちそうな人間にスミレの花を売って暮らしていました。ある日、マルグリットは伯爵家で行われるパーティーに向かう途中のボーマルシェ(山路和弘)にスミレの花を売りつけるのですが、小銭に見せかけた銅を掴まされてしまいました。怒ったマルグリットは、ボーマルシェを追いかけてパーティー会場に紛れ込むのですが、そこにマリー・アントワネットも来ていたのでした。
 マルグリットは、その場でマリー・アントワネットからシャンパンを浴びせられ辱めを受けたことで、マリーたち貴族に対して、敵愾心を掻き立てられるのでした。

 マリー・アントワネットはオーストリア人ということで、王妃でありながらフランス人に溶け込めませんでした。マリーの周りには彼女に取り入って商売をしようという人間ばかりでした。マリーの浪費に意見をする大臣は国王によって更迭されてしまうありさまでした。
 マリーが唯一心を許せるのが、フィンランド人の恋人フェルゼンだけでした。

 こうしてマリーとマルグリットは別々の人生を送っていくのですが、国外逃亡しようとしたマリーたちが捕らわれ牢獄に幽閉された時、マルグリットは小間使いとしてマリーたちの行動を見張るために送り込まれます。

 そこでマルグリットは子供の頃父親にたった一つ教えてもらった歌を、マリーが歌うのを聞くのです。そして今まで敵としてしか見ることができなかったマリーに親近感を覚えるのでした。

 たぶん"ベルばら"を読んだことのある人なら、有名なエピソードや登場人物が共通しているので、何の抵抗も無くこの芝居を見ることができるのではないでしょうか。

 ただ、"ベルばら"と違って、貴族の邸宅パーティーのシーンは人間の醜悪さをあらわすためか、華やかさが足りない感じがしました。舞台の装飾も簡素化されてあるので、貴族の生活と庶民の生活の差が視覚的に理解できるという風には行かなかったと思いました。

 当時錬金術師として有名だったカリオストロがところどころ出てくるのですが、あまり意味がなかったような気もしました。預言者という訳でもなさそうでしたし。

 引っ掛かったのはそれくらいで、フランス王妃として華麗にわがままに暮らしていたマリー・アントワネットが時代にどんどん追い詰められ、子供が亡くなり、国外逃亡に失敗して幽閉され、夫が殺され、子供と引き離され、恋人のフェルゼンと別れ、最後はギロチンの下に横たわるまでを演じた涼風真世さんに、感服しながら拝見しました。

 マルグリット役、私が見たのは新妻聖子さんの時でしたが、歌唱力の凄さに感心させられました。
 
 フェルゼン役の井上芳雄さんは6年ぶりに拝見したのですが、すっかり大人の雰囲気で、愛するマリー・アントワネットのために何もすることができなかった切なさが伝わってきました。
 
 狂言回し・ボーマルシェ役の山路和弘さん。俗人ぶりが楽しかったです。ボーマルシェは劇作家なので冷静な視点を持って、ある時は貴族側にある時は革命側にと常に権力を握る人間たちに近づいて世の中を泳いでいくのです。特に後半、時代が動き出し状況が複雑になってくると山路さんの出番が多くなり、山路さんを楽しみに行った私は堪能させてもらえました。

 原作が遠藤周作さんということで、キリスト教的思想が一本筋のように通っており、マルグリットが子供の頃育てられた教会の修道女役の土居裕子さんの透き通った歌声がよくそれを象徴していたのではないでしょうか。

 

2005年12月23日 (金)

「リンダリンダ」 ザ・サードステージ

観劇日…2004年12月11日
劇場…シアタードラマシティ


 アマチュアロックバンド・ハラハラ時計はメインボーカルのカズトがレコード会社に引き抜かれ、ドラムのヨシオは自分の実力に見切りを付けて、稼業を継ぐため田舎に帰ってしまったため、解散の危機にさらされていた。残されたのはリーダーでギターのヒロシとベースのマサオ、マネージャーのミキの三人。ヒロシはカズトの兄である分、悔しさも人一倍だった。その上、ヒロシは7年間付き合っている彼女のアキコから、プロへの道をあきらめて、ちゃんとした仕事をしながらアマチュアでバンドを続けたらと言われていた。
 本物のロックバンドにこだわるヒロシは、ヨシオの田舎のアサハヤ湾にギロチンのような堤防を国や県、建設会社が漁民の反対を押し切って作られたことを思い出し、その堤防を爆破したらカズトもヨシオも帰ってくる、そしてそこでライブをしようとぶちあげてしまう。
 ヒロシの提案にあきれたマサオとミキはあきらめさせようとするのだが、喫茶店でのミーティングを荒川という男に立ち聞きされてしまう。荒川という男は学費値上げ反対の学生運動に参加したのがきっかけで30年も極左グループに在籍してしまっていた。
 荒川は爆発物について詳しく、ヒロシはいつのまにか爆弾を作ることに夢中になっていく。毎日続く3人のミーティングがうるさいと通報されて、警官が注意しにくる。事情聴取でバンドのドラマーがいなくなったことを知り、警官の大場が自分も参加すると言い出した。
 初めはヒロシの暴挙を留めようとしていたマサオとミキもいつの間にか、アサハヤ湾の堤防爆破計画に巻き込まれ、決行日12月20日を迎えてしまう。
 堤防爆破を阻止しようとする元メンバーのヨシオや機動隊との大立ち回りもあり、最後は劇場全員のスタンディングオーべイションのカーテンコールで賑やかに終了。 
 ブルーハーツのロック・爆弾・ラブコメ・機動隊との大立ち回りのどたばたの合間に、舞台壁面の画面にアサハヤ湾が堤防によって仕切られていく映像や学生運動の映像が流され、解説のようなセリフがはめ込まれていました。そこに浮ついた芝居と一線を画そうという意図がみえたのですが、芝居と上手く融合できていなかったように思えました。
チラシとともに座席に置かれていた鴻上尚史のごあいさつの文中に、プロの演劇人になる前に鴻上氏が元カノから言われた言葉が書かれてあり、それが芝居の中にも取り入れられていました。ヒロシは若き日の鴻上氏の姿でもあったようです。
 芝居全編に渡りブルーハーツのロックを使っていたからでもあるのでしょうが、役者全員がマイクを使用していたので観劇後多少疲れが残ったように感じました。
 山本耕史・松岡充・馬渕英里何の三人は全力疾走のような芝居、この三人に対して大高洋男が時代に乗り遅れ妻子に見捨てられた男の哀感が、この芝居に厚みを与えたと思います。また、警官大場役の北村有起哉のとぼけた味も面白かったと思います。
 

2005年10月26日 (水)

「エリザベート」

観劇日…2001年8月11日
劇場…梅田コマ劇場 


実は今年大阪でラインアップされていたお芝居のなかで一番見たかったのがこの「エリザベート」でした。
「エリザベート」は宝塚歌劇で雪組の一路真輝・星組の麻路さきと2回見ています。今回で3回目になるのですが、何度も見たくなる魅力ある作品です。本物の男性が出てくるミュージカルも久しぶりでした。
 たまたま私の座った席の後ろに元宝塚トップスターのファンの二人連れの女性が座っておられ、その方達の開幕前と幕間のおしゃべりが楽しくて聞き耳を立ててしまいました。お陰でパンフレットは買ってなかったのですが、だいぶ参考になりました。お芝居の楽しみの中にはこういう「袖すり合うも他生の縁」のようなものもあるんですよね。
さて、舞台の方は宝塚に比べると随分大人の雰囲気でした。それにしても私が芝居を見始めた頃約20年前のことを思うとミュージカル俳優の層が厚くなりました。あの頃脇役と言えば梅コマダンサーズの皆さんががんばっておられましたが、私の目からはどうしても何か違うという気がしたものです。ところが今や、日本でも適材適所。○○出身という垣根を越えて、どの俳優さん達も歌える、踊れるそれもかなりのレベルの高さです。見応えがありました。
一路真輝さんは若い頃よりもフランツ・ヨーゼフとの亀裂が入りだしたころからの苦悩の皇后が良かったと思いました。特に皇太子ルドルフの柩に泣きすがるところが胸に迫りました。フランツ・ヨーゼフの鈴木綜馬さんはテノールの素晴らしい歌声でした。演技的には少し固さがありましたがそれが真面目なフランツ・ヨーゼフ役にはまっていたと思います。影の主役トートは文学座の内野聖陽さんでした。退廃的でいて本物の男でなければ出ないような男臭さや力強さもあり、歌の高音部に辛いところが所々あったのですがそれを充分に補っていたと思います。
今月の例会の「無法松の一生」のところで津嘉山さんについて書いたように、帝劇や梅コマのような大きな舞台を経験した後で、いつになるかは判りませんが京都労演の舞台に戻ってきたとき、内野さんがどんな演技を見せてくれるか楽しみになってきました。期待した以上の「エリザベート」、見ることができて本当に幸せでした。