花組芝居 Feed

2012年4月30日 (月)

ワンダーガーデン

観劇日…2012年4月8日
劇場…新神戸オリエンタル劇場

 明治の終わり頃から20年に渡る三姉妹と義妹の物語。
 長女・千草は杉山少尉と結婚することが決まる。千草は少尉の妻として規則正しく生きて行く。
次女・薫子は薔薇の美しさに惹かれて庭にやって来た大村子爵と恋をするが、大村には妻がいた。義妹・桜が特高警察に捕まったことで大村の操縦する飛行機で上野に向かうが悪天候で飛行機が墜落し、自分だけが生き残る。
三女・葉月は、読書好きで詩人の石巻と付き合ったりもしたのだが、祖父の葬式を手伝いに来た実業家・毛利と結婚する。
桜は女優になり、葉月がかつて付き合っていた石巻と結婚し、左翼活動に奔走している。

 元々花組芝居の同期4人の入座20周年記念で上演された作品の再演です。
但し初演は東京だけだったので私としては初めての観劇となりました。

 美しく手入れされた庭のある一家の三姉妹と義妹、そして彼女たちの夫や恋人たちを4人が早変わりで演じていきました。作はわかぎゑふさんで、どんなに時間が流れ世間が騒がしくなっても、毎日の生活は変わらず続いていくという女性作家の目線で、庭が4人の女たちを包みこんでいるように思いました。

 再演ということで前回とは違う配役だったそうで、こういうことができるのも花組芝居でちょくちょく役替わりで上演したりするからなのでしょう。

 一度決まった規則は守り通すという長女・千草、彼女を演じた大井靖彦さんのキャラとは違った感じで、そんなこと口で言ってても、あんまりちゃんと守って無いだろうと思えました。大井さんは、どことなく甘えん坊の雰囲気があるので、千草は難しかったんじゃないでしょうか。もう一役の実業家毛利のような男の役も大井さんには珍しく、いくら頑張ってもあんまり儲けられない人だろうなという感じでした。

 次女・薫子、詩人石巻役は桂憲一さん。桂さんは手堅い演技をなさるので、配役に違和感はありませんでした。
 前半葉月をサディスティックに翻弄していた石巻が、後半はヒモ男風に桜の尻に敷かれている差が面白く、年月や特高に逮捕されたり、子供の存在が男を変えるんだなと思いました。

 三女・葉月、大村子爵役は植本潤さん。こちらも華やかな女形なので葉月は可愛らしく安心して拝見しました。大村子爵を落ち着いた雰囲気で演じられたということは、中年男性という設定だったのでしょうか。私としては珍しい役を拝見させていただいた感じで、こんな優しそうな男性が奥さんがいるのに薫子と不倫してしまうのだろうかという印象でした。
 ラスト、大村子爵に瓜二つで薫子と長い間文通していた台湾人として出て来られたのですが、薫子が女性だと思っていたのが実は男性だったというちょっとしたドンデン返し、これからこの二人に何が起こるのかロマンティックに終わっていったのも女性作家らしい雰囲気ではなかったでしょうか。

 義妹・桜、杉山少尉役は八代進一さん。兄妹役を一人で演じることになりました。女優になってからの桜は気風のいい女で八代さんらしさがありました。
 それにしても当時の世相で軍人としてエリートコースを歩む男の妹が、特高にマークされる左翼の女優になれたのかどうか、ちょっと疑問が残りました。

 4人の男たちが忙しく早替わりしながら話が進んだので、4人の早変わりでなく、普通に上演されていたら、袴姿の女学生や左翼闘士の女優など華やかな舞台面になっただろうと思いました。

2012年1月 3日 (火)

聖ひばり御殿

観劇日…2011年10月30日
劇場…ABCホール

 ジャンヌ・ダルクと美空ひばりさんの人生をモデルにした作品で初演から16年ぶりの上演でした。
狸御殿が舞台ですので、イギリス対フランスが狐対狸の戦争と言う設定でした。ジャンヌ・ダルクの復権裁判が始まり、家族やシャルル7世などが証人として呼び出され、ジャンヌ・ダルクの人生が描かれていくのですが、父親が魚屋だったり母親がステージママだったりと、どこか美空ひばりさんを想像させ、昭和歌謡のメロディで芝居に合わせた替え歌がふんだんに登場しました。

 16年前の加納座長のオリジナルが元になっているので、パンフレットにも書かれていたとおり、少々混沌としていました。私は初演の「聖ひばり御殿」を見ていなかったので、途中までこの芝居がジャンヌ・ダルクが処刑されてから24年後の復権裁判のことだと知らずに見ていました。というかジャンヌ・ダルクに復権裁判というものがあった事自体も知らなかったのですが。

 この公演で感じたのは、とにかく花組芝居の若手陣の奮闘でした。主人公の元祖姫狸田の君役・堀越涼、娘狸玉木役・二瓶拓也、狸穴屋金之助他2役・谷山知宏がいつの間にやら主要なキャストとして芝居をまわすことができるように育っていたこと。大阪に住んでいるので、花組芝居は年に1回の本公演にしか行かないということもあり、若手の成長を目の当たりにし、花組芝居も当分安心だなと思いました。

2011年3月 5日 (土)

花たち女たち

観劇日…2010年11月21日
劇場…ABCホール

 有吉佐和子原作の「芝桜」とその続編「木瓜の花」を脚色した作品でした。
 東京の花柳界で戦前~戦後を生き抜いた正子と蔦代。この二人をベテランの植本潤と八代進一が演じた夢たちチーム、堀越涼と谷山知宏で演じた恋たちチームの完全ダブルキャストとなっていました。

 私が見たのは夢たちチーム。正子が植本さん、蔦代が八代さんだったので何の心配もなく見られましたが、30年近い年月のエピソードが駆け足で過ぎていく感じがして、同じ作者の作った「和宮様御留」で感動した経験からすると、ちょっと肩透かしの感じが残ってしまいました。それというのも30年ほど前、有吉佐和子さんの芸道物にはまって、「芝桜」も熱心に読み返していたので余計物足りなさを感じてしまったのかもしれません。
 「木瓜の花」の方は読んだことがなかったので、蔦代と母親、そして若い恋人との関係や蔦代がやり手の社長になっていたことなど面白かったです。

 心残りなのは、花組芝居ファンなら若手の恋たちチームも見るべきだったなぁと、夢たちチームの正子と蔦代は安定しているけれども、前半半玉時代がぼちぼちきつくなってきているように見えたからです。若手たちが演じる前半を見て、ベテランの後半見るのが正解だったような気がして反省しきりでした。

2009年12月31日 (木)

ナイルの死神

観劇日・・・2009年11月8日
劇場・・・新神戸オリエンタル劇場

 花組芝居が、KABUKI-ISM其ノ壱として取り上げたのが、アガサ・クリスティの「ナイルの死神」でした。

 ナイル川を行く船に乗ってエジプトを観光するツアーに、個性的な客が集まってくる。
 その中に、新婚旅行中の貧乏な青年・サイモンと結婚したセレブの娘・ケイがおり、乗客たちの興味の的だった。
 元々サイモンはケイの友達・ジャクリーンの婚約者だったのだが、サイモンは仕事を紹介してもらうためにケイに会ったことで、ジャクリーンはケイにサイモンを横取りされてしまったのだ。

 楽しい新婚旅行のはずが、ジャクリーンが現れたことで船内に緊張感が漂い始める。
 そんな時、ジャクリーンがサイモンの脚を拳銃で撃つ事件が起こり、その夜ケイが射殺される・・・。

 アガサ・クリスティの戯曲、見終わった後の感想はやっぱり一番怪しくない人間が犯人というセオリー、現在毎日のようにテレビで流されているサスペンス物の元祖だなぁと思いました。

 衣装が、チラシで岡田善夫さんが描かれていたものを再現していて豪華でしたし、既にチラシで見ていたので親しみもあり、ここまで徹底するのかと感心しました。

 お芝居の方ですが、とにかく歌舞伎や新派が元になっている脚本と違ってセリフの量が凄く、カーテンコールの座長の挨拶の時に、原川さんがこんなにたくさんセリフをしゃべってるのを見たことが無いというようなことを仰ってましたが、まさにその通りで驚きと共に、お疲れ様でしたという気持ちになりました。
 原川さんは神父の役で、この事件の真相を明かす探偵のような立場になります。聖職者が殺人を犯したり嘘をついたりせず信頼される地位であった時代が舞台なので探偵が出ない芝居では当然なのかもしれませんが、普段花組芝居で怪しい役が多い原川さんが演じるとどんなに謹厳実直な神父であったとしても怪しく見えてしまいました。ひょっとするとそれが座長の狙いだったのかもしれませんが。

 KABUKI-ISM=洋装歌舞伎、歌舞伎とは全然結びつかないアガサ・クリスティを第1作に選んだ座長、次は誰の作品を取り上げるのか気になります。

2009年7月18日 (土)

花組ヌーベル 「盟三五大切」

観劇日…2009年6月14日
劇場…大阪市立芸術創造館

 舞台はお通夜の会場のセットが組まれていました。
 下手に祭壇。花組芝居のメンバーらしく喪服のスーツ姿のまま男女の役柄を柔軟に演じ分けていきます。

 「盟三五大切」は仮名手本忠臣蔵を土台にし、四谷怪談ともリンクして話は進んでいきます。
 船頭三五郎はのっぴきならない金を作るため女房お六を小万と名乗らせて芸者の商売をさせている。
小万には薩摩源五兵衛という客がおり、金を巻き上げていた。源五兵衛は家財を売り払って入れあげるほど、小万に惚れていた。

 源五兵衛は大石蔵之助に渡すための討ち入り資金の百両を叔父から援助してもらう。大金が源五兵衛の手元に入ったことを知った三五郎と小万はこの金を奪い取ろうと企む。

 一言で言うと「金は天下の回り物」ということわざを芝居にしたような話です。
 三五郎が子供のころ飛び出した家は元々赤穂浪人・不破数右衛門に使える下僕で、三五郎が女房を芸者にしてまで作ろうとしていた金は、不破数右衛門に渡すための物、しかし三五郎が金を奪った源五兵衛は実は不破数右衛門だったという因果話。

 今回の公演で一番珍しかったのが、スーツ姿で男性の役を演じた加納座長。普段の公演だとほとんどこってり着飾った女形を演じることが多いので、花組ヌーベル公演だからこそ見ることができたのかもしれません。男の役を演じられたとはいえ、見ているときには何の違和感もなく、後になってそういえば花組芝居の舞台で座長の男役見たのは初めてかもと気付いたくらいでした。

 花組芝居は毎回大笑いさせてもらえるんですが、今回私が花組芝居を見続けてきた中で一番笑わせてもらいました。
というのも家主弥助を演じた谷山知宏君がビールをラッパ飲みし杖を振り回してセリフを言うシーンで、ビール瓶から吹き出しそうな泡を押さえるのに必死な松原綾央君は仕方なく焦ってビール瓶に指を突っ込んでる。舞台の奥では谷山君の暴れっぷりと松原君の焦ってる姿を、心配そうに見てる加納座長。
 しかし加納座長と松原君の雰囲気・会場が何故大爆笑してるのか全く意に介さず、何事も無いように演技を続ける谷山君、この天然ぶりが私のツボに入ってしまい、笑いが止まらなくなってしまいました。

2009年2月22日 (日)

泉鏡花の夜叉ヶ池

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観劇日・・・2009年1月31日
劇場・・・伊丹市立演劇ホール AI・HALL

 花組芝居としては三演目の「夜叉ヶ池」ですが、私としては初めての観劇となりました。
 小林大介さんが萩原晃を演じる那河岸屋組の方です。

 「夜叉ヶ池」は有名な戯曲なので、あらすじは割愛させていただきます。

 加納座長がパンフレットの座談会の中で「今回、晃と百合の役に関しては"継承"ということを意識しています。」と語っておられましたが、主役の2人だけでなく、湯の尾峠の万年姥・白男の鯉七・黒和尚鯰入を演じた若手3人にも花組芝居が着実に継承されていると思いました。

 白魚の鯉七役の美斉津恵友君の躍動感のある動き、万年姥役の谷山知宏君のお茶目なおばあちゃんぶり、黒和尚鯰入役の丸川敬之君は博徒伝吉役が回ってきたため、アドリブでおたおたしてるところを楽しませてもらいました。
 晃と百合の慎ましやかな生活のシーンから、夜叉ヶ池の眷属たちが現れるシーンへの橋渡しの上に、セリフの量が膨大になり、場を引っ張って行かねばなら無いという重要な持ち場を任されたことは、この3人にとって大変なことだったのではないでしょうか。

 若い谷山君の老婆役がなかなか良かったので、女形をやるときは老けが多くなるのかなぁと思ってしまいました。でも次に女形されるときは、どんな役に挑戦させられるんだろうかと楽しみになりました。
 
 主役の2人ですが、まぁこんなものかなと。本格的な女形を仕込まれた二瓶君ですが、自分の色が出てくるのにはまだまだ場数が欲しいと言ったところでしょうか。今後に期待したいと思います。

2008年10月25日 (土)

花組芝居 「怪談牡丹燈籠」

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日時・・・2008年9月21日
劇場・・・新神戸オリエンタル劇場

「怪談牡丹燈籠」といえば、乳母が牡丹燈籠を手に提げ、下駄の音を響かせ、恋人の新三郎の元に通ってくるお露の話が有名です。
今回も花組芝居は原作に立ち返り、お露新三郎の話とともに、お露の父飯島平左衛門の話も絡んできました。

 飯島平左衛門は、かつて街中で酔っ払って暴れている浪人・黒川孝蔵を斬り捨てる。
 18年後、一人娘お露と女中のお米を柳島の別邸に住まわせ、自分は本宅に住んでいた。本宅には妾のお国がいたのだが、彼女は隣宅の次男・源次郎と通じていた。そして源次郎とお国は、平左衛門を釣りに誘い出し川に突き落として殺害し、源次郎が飯島家の家督を継ぐ計画を立てていたのです。
 その計画を聞いてしまった草履取りの孝助は、主君平左衛門の恩に報いるために源次郎を狙い始めます。

 源次郎たちが釣りに行く前夜、平左衛門宅に源次郎が泊まることになり、孝助は源次郎を槍で刺し貫くのでしたが、実は源次郎の着物を着た平左衛門だったのです。
 孝助は18年前に平左衛門に斬り殺された孝蔵の息子でした。そのことが分かっていたので平左衛門はわざと孝助に討たれるようにしたのです。
 平左衛門が討たれた事で、源次郎とお国は飯島家から逃げ出します。飯島平左衛門の思いを汲んで、平左衛門の仇を討つため孝助はお国たちを捜す旅に出るのでした。

 一方亡霊のお露が恋人の新三郎に逢いたくても、家の周りにはお札が張られ新三郎は金無垢の仏様を首からかけていたために近づくことさえできませんでした。それでお露たちは、新三郎の孫棚を借りていた伴蔵にお札をはがすように頼みます。そこで新三郎はお露に百両くれるならお札をはがしてやろうと持ちかけました。

 そこでお露たちは、飯島家から百両を盗み出し、伴蔵に渡します。百両を受け取った伴蔵はお札をはがし、金無垢の仏様を盗んでしまいます。そのため、新三郎はお露に取り殺されてしまいました。

 伴蔵はお露からもらった百両を手に田舎で小間物屋を始め、なかなか繁盛するのでした。しかし金が入ってきた伴蔵は飲み屋の女に入れあげて苦労させてきた女房を疎かにするようになっていくのでした。

 その飲み屋の女がお国だったのです。(あらすじはパンフレットを参照させていただきました。平左衛門とお露の話は互いに絡み合いながら進んでいくのですが、ここでは分けて書きましたので、実際の芝居の流れとは違っています、ご了承ください。)

 飯島平左衛門の話は、歌舞伎などにもよくあるストーリーで明治初めのころの日本人には理解し易いものだったのではないでしょうか。そして日本の怪談で唯一足のある幽霊・お露の話も昔からテレビで見てきたのでだいたいのストーリーは知っていました。
 ただ、お露・お米たちが伴蔵に百両ねだられて、幽霊なのに飯島家に盗みに入っていたことに驚きました。(私が子供のころ見た牡丹燈籠のドラマでは新三郎が死んだ後、判蔵がもらったお金がガラクタになっていたので、そういうストーリーだと思い込んでいました)

 花組芝居版怪談牡丹燈籠での中心はなんといってもお国・源次郎とお峰・伴蔵の二組のカップルだったのではないでしょうか。
 お露・新三郎という細い糸がこの二組を最終的に繋げていく因果の面白さ。お国を八代進一さん、源次郎を各務立基、お峰を加納幸和さん、伴蔵を小林大介さんという配役にしているところに、力の入れ方が感じられました。
 生活苦でお峰が内職してるシーンで、座長が次回公演のチラシを封筒に詰めている手際の良さに大笑いさせてもらいました。

 「金が因果の世の中」とは昔からよく使われる言い回しですが、お露の幽霊が盗み出した百両が新三郎の命を奪い、お峰たちや孝助の人生を狂わせていく、花組芝居で怪談牡丹燈籠の全貌を知り、三遊亭円朝が語るこの物語を実際に聞くことができた明治の人たちがうらやましくなりました。

 

2008年1月14日 (月)

「KANADEHON忠臣蔵」

観劇日…2007年12月23日
劇場…シアターBRAVA!


 花組芝居創立20周年の締めを飾る作品として、義太夫狂言の仮名手本忠臣蔵を2時間半に凝縮して上演しました。

 花組芝居はもともとネオかぶきを標榜し、歌舞伎作品を現代に置き換えて上演していたことで評判を取っていたのですが、ここ10年以上は歌舞伎から離れて、泉鏡花や漫画、新作などの作品上演に重点を置いていました。
 それが20周年の節目に仮名手本忠臣蔵を取り上げたことで、座員23名によるベテランの力量・若手のがんばりを拝見することができたのではないでしょうか。

 衣装も歌舞伎の本行通り、そこに違和感を感じさせなかったことで、しっかり舞台に目を向けることができました。

 大序の兜あらためのシーンで、ヘルメットが出て来たのには爆笑させてもらいました。またそのヘルメットが恭しく三方に乗せられて奉納されたのはおもしろかったです。そこでしっかり花組芝居のペースに乗せられてしまいました。

 九段目山科閑居の場で、加納座長が戸無瀬を演じられたのですが、ちょっとした仕種に歌右衛門丈の面影を感じ、この役をやりたかったから忠臣蔵を選んだのだろうかとふと思ってしまいました。
 また戸無瀬に対するお石の役は山下さんで、花組芝居を支えるベテラン女形二人の対決は見応えがありました。

 歌舞伎ではほとんど上演されない天河屋の場をダイジェストとはいえ見ることができて、ちょっと得した気になりました。

 花組芝居も最近新人が増え、座員23名という大所帯になったので、多彩な登場人物でも適材適所の配役ができたと思いました。
 今回、特に印象に残ったのが、鷺坂伴内役の谷山知宏君でした。舌足らずなしゃべり方と不思議な動きが個性的な先輩役者たちの中で埋もれることなく、鷺坂という道化役を上手く作り上げていたのではないでしょうか。
 今度普通の役を当てられたときにどんな演技をするのか楽しみです。

 

2006年9月29日 (金)

「百鬼夜行抄2」

観劇日・・・2006年9月17日
劇場・・・新神戸オリエンタル劇場


 今市子さん原作の漫画「百鬼夜行抄」劇化第2弾の作品。
今回は縦糸にかつら(実は姫と呼ばれる山の神)と飯嶋開の恋話を、横糸に飯嶋家とそこに現れる妖魔たちとのゴタゴタを描いていました。

 前回は昭和ノスタルジー溢れる茶の間のセットが目を引きましたが、今回は抽象的に木の枠を組み合わせて舞台に様々な空間を作り出していました。(具体的なセットを作る事の方が花組芝居としては珍しいので、いつもの花組芝居とも言えるのですが)

 飯嶋家では法要の真っ最中。親戚一同が集まる中、26年前に行方不明になっていた開が庭から突然現れ、律によって現世に引き戻されました。
 元々妖魔が見える飯嶋家の人々、その上、飯嶋家の庭はあの世と繋がる穴が開いていると言われていたのですが、開が戻ってきたことによって、穴はどんどん大きくなり、とうとう池になってしまったのです。
 そしてある事件が起こり、律がその池に落ちてあの世に迷い込んでしまいます。そこで律はかつらに出会います。かつらは律をあの世に留めようとするのですが、飯嶋家全員一丸となって律を救い出し、開はかつらに「死んだら必ず君の元に戻る」と約束するのでした。
 
 舞台版「百鬼夜行抄」の脚本を書かれたのはわかぎゑふさん。私は原作を読んでいないのですが、友人の話によると今回舞台化するに当たって取り上げられた漫画の話がない交ぜになって同時進行しているということでした。
 そのため、ちょっとごちゃ混ぜな感じもありましたが、最初と最後のかつらと開の恋話が一本の芯となって貫かれていましたので、余韻の残る仕上がりになっていたといえるのではないでしょうか。

 律役の美斉津恵友・司役の堀越涼は前回の「ザ・隅田川」で入座披露したばかりの新人。律は高校生という設定なので、美斉津君の若さが生きていたと思います。司役の堀越君は本格的な女形が初めてとなるので、女性の声の作り方や女形の演技がまだまだで、ちょっと落ち着かない感じがしました。

 加納さんのかつら(実は姫と呼ばれる山の神)の扮装が白のお引きずりの姫姿だったので、前回と同じ大姫かとずっと思って見ていました。家に帰る途中の電車の中でパンフレットを見直してみて、違う役だったことを知り、ちょっと損したのではないかと思いました。パンフレットに載っていた今市子さんの書かれていたかつらの姿のほうがはかなさがあってよかったのではないでしょうか。

2006年5月 6日 (土)

「素ネオかぶき ザ・隅田川」 花組芝居

Iwoapnvv 観劇日…2006年4月23日
劇場…大阪OBP円形ホール


 「隅田川」は謡曲から発展した人気の題材で歌舞伎狂言の一つの世界として数々の作品の土壌になっています。この隅田川を世界に展開している幾つかの作品を一つにまとめたのが、今回上演された花組芝居版「ザ・隅田川」です。
 「素ネオかぶき」と頭に付いているのは、衣装・化粧を施さず黒紋付にからし色の袴姿で演じる現代に適応するように再編成した歌舞伎狂言とでもいうべきでしょうか。
 10年ぶりの再演となりました。

 芝居が始まると研修生も含む16人の男たちが、上手・下手に向かいあって座っていました。ジーっと座ってる座員たちを、これから何が始まるのかとジーっと見つめている観客。そのうちもぞもぞし始めた座員たちが互いの場所を交換するように移動し始め、混沌とした雰囲気から物語の発端を踊りながら演じていきます。
 パンフレットの解説「隅田川物の系譜」によると鶴屋南北の「隅田川花御所染(女清玄)」は隅田川の世界に、桜姫と鏡山の世界をない交ぜにした作品なのだそうですが、「ザ・隅田川」でも桜姫と鏡山というお馴染みのストーリーが展開し始めて私自身が芝居に入り込むことが出来たように思えました。

 桜姫は許婚が亡くなったことにより、表向きは出家して許婚の後世を弔うことにしたのですが、実はある夜、忍び込んできた盗賊と一夜の契りを交わし、子供まで身ごもってしまっていました。そしてその男のことを忘れられず、自分の腕にもその男がしていたのと同じ刺青を入れていたのです。
 出家のための準備に一間で休息していた所に、その男が現れ、不義を重ねてしまいます。それを寺の者たちに見つかってしまうのですが、その時には相手の男は逃げてしまっており、桜姫の不義の相手はこの寺の高僧・清玄とされ、清玄は寺から追い出されてしまうのです。
 清玄自身は桜姫と何の関係もなかったのですが、若かりし頃稚児の白菊丸と心中未遂を起こしており、白菊丸は死に、清玄が生き残ったという過去がありました。その白菊丸に桜姫は瓜二つだったのです。
 こうして高僧と姫という高貴な身分の人間が底辺まで落ちていくという話です。

 鏡山はお家騒動にからんで、局岩藤と中老尾上の勢力争いを描く江戸時代大奥の女たちに大人気だったという狂言です。
 町家出身の中老尾上は、姫の気に入られていたのですが、町家の出ということで何かにつけて岩藤からいじめられていました。数々の辱めを受けた尾上は自害し、その仇を尾上の召使お初が討つというのがメインストーリーです。

 普通なら桜姫も鏡山もそれぞれ一つの物語として見応えのある作品なのに、それぞれ有名な見せ場を繋ぎ合わせてあり、退屈させない構成となっていました。

 今回の公演の出演者は総勢18人、そのうち初お目見え3人、前回から花組芝居に参加した1人、研修生2人と、1/3が新人という構成でした。
 元々花組芝居というのはネオかぶきという土壌からきているので、新人を育てるためにも、衣装・化粧に頼らず自分の演技力によって、役になりきるという素ネオかぶきは勉強になったのではないでしょうか。

 新人ご披露の挨拶が、芝居の途中であるのですが、千秋楽ということもあり、座長からアドリブで一句披露せよとの命が下り、突然のことで何も思いつかず焦っている新人3人の姿に大爆笑させてもらいました。あまりにおかしかったのでこの3人がどんな句をひねり出したかに付いては失念してしまったのですが、2番目に座っていた子は「隅田川」と言ったきり黙りこんでしまい、後ろに座ってる先輩のアドバイスで「隅田川 あぁ隅田川 隅田川」と何とか乗り切っていました。

 この挨拶のすぐあとに、岩藤が尾上を草履で打つという有名な「草履打ち」のシーンがあったのですが、ここでも岩藤役の座長が尾上役の植本潤さんに向かって「辱めをうけた一句を詠め」と言ったところ、さすが潤ちゃん「桜散り 座長も去って 座内安定」(うろ覚えですが)と詠み、劇場中が爆笑の渦に包まれました。こうなると岩藤の草履打ちも激しさを増し、ますます可笑しかったです。どうも私たちは潤ちゃんが出てると座長vs潤ちゃんの女優対決を密かに望んでいるのかもしれません。