2009年12月31日 (木)

ナイルの死神

観劇日・・・2009年11月8日
劇場・・・新神戸オリエンタル劇場

 花組芝居が、KABUKI-ISM其ノ壱として取り上げたのが、アガサ・クリスティの「ナイルの死神」でした。

 ナイル川を行く船に乗ってエジプトを観光するツアーに、個性的な客が集まってくる。
 その中に、新婚旅行中の貧乏な青年・サイモンと結婚したセレブの娘・ケイがおり、乗客たちの興味の的だった。
 元々サイモンはケイの友達・ジャクリーンの婚約者だったのだが、サイモンは仕事を紹介してもらうためにケイに会ったことで、ジャクリーンはケイにサイモンを横取りされてしまったのだ。

 楽しい新婚旅行のはずが、ジャクリーンが現れたことで船内に緊張感が漂い始める。
 そんな時、ジャクリーンがサイモンの脚を拳銃で撃つ事件が起こり、その夜ケイが射殺される・・・。

 アガサ・クリスティの戯曲、見終わった後の感想はやっぱり一番怪しくない人間が犯人というセオリー、現在毎日のようにテレビで流されているサスペンス物の元祖だなぁと思いました。

 衣装が、チラシで岡田善夫さんが描かれていたものを再現していて豪華でしたし、既にチラシで見ていたので親しみもあり、ここまで徹底するのかと感心しました。

 お芝居の方ですが、とにかく歌舞伎や新派が元になっている脚本と違ってセリフの量が凄く、カーテンコールの座長の挨拶の時に、原川さんがこんなにたくさんセリフをしゃべってるのを見たことが無いというようなことを仰ってましたが、まさにその通りで驚きと共に、お疲れ様でしたという気持ちになりました。
 原川さんは神父の役で、この事件の真相を明かす探偵のような立場になります。聖職者が殺人を犯したり嘘をついたりせず信頼される地位であった時代が舞台なので探偵が出ない芝居では当然なのかもしれませんが、普段花組芝居で怪しい役が多い原川さんが演じるとどんなに謹厳実直な神父であったとしても怪しく見えてしまいました。ひょっとするとそれが座長の狙いだったのかもしれませんが。

 KABUKI-ISM=洋装歌舞伎、歌舞伎とは全然結びつかないアガサ・クリスティを第1作に選んだ座長、次は誰の作品を取り上げるのか気になります。

2009年10月31日 (土)

ブラックバード

観劇日・・・2009年9月5日  

劇場・・・シアター・ドラマシティ

作:デビッド・ハロワー 翻訳:小田島恒志 演出:栗山民也                                                                                                                                                                                                                                  

  ある日、男の勤めている工場に若い娘が訪ねてくる。男は従業員控え室に娘を案内する。
 突然の来訪に男はどぎまぎし、同僚の目を気にしていた。
 
 従業員控え室での男と娘の会話からこの2人の過去が徐々に明らかにされていく。
 男はかつてある町でこの娘の父親からガーデンパーティーに誘われ、そこでこの娘と知り合う。当時彼女は12歳で、恋や男性に興味がある年齢だった。

 この2人は他人の目を盗んでデートしていたが、とうとうオランダへのフェリーが出ている港町に車で駆け落ちしてやってくる。そしてフェリーの出発時間までペンションに忍のび愛し合う。
 男は食べるものを買ってくるとペンションの部屋から出て行ったまま、長い間戻ってこないので、娘は町に探しに行く。パブを回り男を探すが見当たらず、ペンションの駐車場まで戻ってくると男の車が消えていた。
 そこで困っているところを町の人に声を掛けられ、警察に捜索願が出ていた少女だったことが判明し保護される。

 男の言い訳は、食べ物を買って帰ってきたら娘がいなかったので、フェリーの発着所の先に行ったのかと思い探してみたがいなかったので、戻ることにしたということだった。

 保護された娘は、住んでいた町に連れ戻されカウンセラーの先生や親たちの壊れ物を触るような扱いや近所の人々の白い目にさらされながら成長していく。
 男は少女に対する行為によって逮捕され6年の懲役を受ける。
 そして刑務所を出た後、名前を変えてこの工場に勤めていたのだ。

 娘が男の居場所を知ったのは、たまたま銀行で業界誌に男が会社の仲間と一緒に写っている写真を見たのがきっかけだった。

 娘は男に今恋人はいるのかと聞く。男には現在年上の恋人がおり、自分が刑務所に何の罪で囚われていたかは教えていない、そしてあの事件を引き起こした後、12歳の女の子に手を出していないと答えた。
 娘もその後、何人も恋人を作ったが長続きしないのだった。

 工場の勤務時間が終了しても帰ってこない男を心配して、男を捜しに来たのは・・・。

 最初、突然男を尋ねてきた娘の傍若無人ぶりにちょっと苛々させられたのですが、話が進んでいくうちに男の身勝手さ、娘は逃げ出した男を信じていて今でも愛していることが徐々に明らかになっていくと娘に対して同情の気持ちが湧いてきました。

 この芝居の最大の見せ場、男を探して女の子が一人でやってきたシーン。
 芝居が始まってからずっと、観客と娘はこの男の嘘と言い訳を聞かされてきたのか、やっぱりこの男の病気は治らないのかという疑念が浮かんできました。この芝居の心理的駆け引きを楽しむことができて、久々に面白い芝居を見たと思いました。

 日本の場合主張や笑いを押し付けてくる芝居は多いのですが、登場人物と共に心理戦に巻き込まれていくこういう芝居は珍しいので、見終わったあとの満足感が高くなるのではないでしょうか。芝居の終わりは、部屋から逃げるように出て行く男を娘が追いかけていくというもので、結末は観客の想像に任せるというものだったのですが、不完全燃焼という気にはなりませんでした。
 

2009年9月19日 (土)

第十九回 上方歌舞伎会

観劇日・・・2009年8月23日
劇場・・・国立文楽劇場

 「修善寺物語」「双蝶々曲輪日記」「京人形」

 1、「修善寺物語」岡本綺堂によって明治44年に発表された新歌舞伎、上方歌舞伎会で上演するのは珍しい作品です。
 とにかく新歌舞伎はセリフの量が多いし、謳い上げるような名セリフなども散りばめられていて、古典とはまた違った苦労があるのではないでしょうか。
 伊豆の修善寺に住む天下一の面作り職人の夜叉王には二人の娘がおり、妹のかえでは弟子と結婚して職人の妻らしく生きているのですが、姉のかつらは母が昔公家に奉公していたのを誇りに思い、いつか自分も貴人に仕えようと心に決めていました。

 このストーリーからして、何故公家に仕えていた気位の高い女が、名人とはいえ一介の面作り職人の妻になったんだろうという疑問を持ちながらの鑑賞となってしまいました。今考えると明治の頃だと下級武士出身の娘が職人の妻になることも多かったでしょうから、こういう設定でも何の疑問も無く民衆に受け入れられたのかもしれませんが。

 「修善寺物語」のヒロイン・かつらの役はりき彌さん。思い込んだら一直線のかつらは自己主張が強く、芝居をぐいぐい引っ張っていく立女形の役柄なので、普段脇役でおとなしく舞台を勤めておられるりき彌さんにとって、そのエネルギーを振り絞るだけでも大変だったのではないでしょうか。
 妹たちと言い争っている場面はかなりがんばって演じておられたようですが、頼家と2人だけのシーンになると力の入り具合が弱くなったような気がしました。
 
 2、「双蝶々曲輪日記」より「引窓」が上演されました。「引窓」は上方歌舞伎会でもちょくちょくお目にかかる作品ですが、今回は扇乃丞さんが老母・お幸の役をされたことで、上方歌舞伎会でも世代交代なのかと驚きました。
 南与兵衛の片岡松次郎さん、女房お早の上村純弥さん、濡髪長五郎の片岡當吉郎さんの3人が「引窓」の芝居をちゃんと作り上げていたので、世代交代だなぁと強く感じさせられたのかもしれません。
 上方歌舞伎会も数年前ベテランの方々が卒業されて、ちょっと手薄になったなぁと感じる公演もあったのですが、上方歌舞伎塾の1期生あたりが随分その穴を埋められるようになってきているので、あの役者さんがこんな役もできるようになったんだとその成長を楽しませてもらえるようになってきました。今後の公演が楽しみです。

 3、「京人形」左甚五郎が自分が作った花魁人形を見ながらに酒を飲んでいたところ、人形が動き出します。ただし甚五郎と同じ振りをするので、試しに花魁の鏡を懐に入れると、人間の女のようなしなやかな仕草になって踊りだすという話です。上方歌舞伎会でも過去に上演されたことがあります。
 人形の箱が開くと、その美しさからジワが湧きました。人形役をやっている役者にとってジワが来ると言うのは喜びだろうなと、私のような素人は思うのですが、実のところプレッシャー以外の何物でもないかもしれません。
 綺麗な花魁姿ではあるのですが、心は左甚五郎のままであり、人形なので動きもぎこちない、そのアンバランスさが笑いを呼び、鏡を胸元に入れた途端、妖艶な踊りになる。この京人形の役は片岡千次郎さん、メリハリのある踊りをなさっていたのではないでしょうか。
 左甚五郎は中村鴈祥さん。名人左甚五郎というには、まだちょっと可愛かったかな?

  

2009年7月18日 (土)

花組ヌーベル 「盟三五大切」

観劇日…2009年6月14日
劇場…大阪市立芸術創造館

 舞台はお通夜の会場のセットが組まれていました。
 下手に祭壇。花組芝居のメンバーらしく喪服のスーツ姿のまま男女の役柄を柔軟に演じ分けていきます。

 「盟三五大切」は仮名手本忠臣蔵を土台にし、四谷怪談ともリンクして話は進んでいきます。
 船頭三五郎はのっぴきならない金を作るため女房お六を小万と名乗らせて芸者の商売をさせている。
小万には薩摩源五兵衛という客がおり、金を巻き上げていた。源五兵衛は家財を売り払って入れあげるほど、小万に惚れていた。

 源五兵衛は大石蔵之助に渡すための討ち入り資金の百両を叔父から援助してもらう。大金が源五兵衛の手元に入ったことを知った三五郎と小万はこの金を奪い取ろうと企む。

 一言で言うと「金は天下の回り物」ということわざを芝居にしたような話です。
 三五郎が子供のころ飛び出した家は元々赤穂浪人・不破数右衛門に使える下僕で、三五郎が女房を芸者にしてまで作ろうとしていた金は、不破数右衛門に渡すための物、しかし三五郎が金を奪った源五兵衛は実は不破数右衛門だったという因果話。

 今回の公演で一番珍しかったのが、スーツ姿で男性の役を演じた加納座長。普段の公演だとほとんどこってり着飾った女形を演じることが多いので、花組ヌーベル公演だからこそ見ることができたのかもしれません。男の役を演じられたとはいえ、見ているときには何の違和感もなく、後になってそういえば花組芝居の舞台で座長の男役見たのは初めてかもと気付いたくらいでした。

 花組芝居は毎回大笑いさせてもらえるんですが、今回私が花組芝居を見続けてきた中で一番笑わせてもらいました。
というのも家主弥助を演じた谷山知宏君がビールをラッパ飲みし杖を振り回してセリフを言うシーンで、ビール瓶から吹き出しそうな泡を押さえるのに必死な松原綾央君は仕方なく焦ってビール瓶に指を突っ込んでる。舞台の奥では谷山君の暴れっぷりと松原君の焦ってる姿を、心配そうに見てる加納座長。
 しかし加納座長と松原君の雰囲気・会場が何故大爆笑してるのか全く意に介さず、何事も無いように演技を続ける谷山君、この天然ぶりが私のツボに入ってしまい、笑いが止まらなくなってしまいました。

2009年6月28日 (日)

いのうえ歌舞伎・壊(Punk) 蜉蝣峠

観劇日・・・2009年4月25日                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                          劇場・・・梅田芸術劇場メインホール

 作・宮藤官九郎のいのうえ歌舞伎

 蜉蝣峠(かげろうとうげ)に一人の男がいた、名は闇太郎。彼は「蜉蝣峠で待つ」という言葉以外の全ての記憶を失くしていた。
 そこに旅役者・銀之助が通りかかり、2人で旅をすることになる。銀之助は座長の妻と浮気をしたということで、ドサ周りの一座から放逐されていたのだった。

 この2人がたどり着いたところは"ろまん街"。この街は先代親分が亡くなった後、天晴組と立派組が街を二分して跡目争いをしていた。
天晴組は先代の息子、立派組は先代の娘婿が取り仕切っていた。
 この街の居酒屋の親父が闇太郎のことを覚えていた。先代親分がやられた日、蜉蝣峠を越えて直訴状を代官に届けようとしていた少年が闇太郎だったのだ。
 その時闇太郎は蜉蝣峠で、村の幼なじみのお泪と待ち合わせの約束をしていたのだった。しかし親分を初めとする大量殺人の事件に巻き込まれてしまったのだ。

 再会したお泪は天晴組で働いていた。記憶喪失の闇太郎と再会し、恋心が再燃するお泪。そんなとき立派組が営んでいた女郎屋から帰る途中で代官が殺されるという事件が起こる。この事件を解決したとして闇太郎が一躍ろまん街の英雄となり、お泪と夫婦になって立派組を引き継ぐ。

 そんな中、自分こそ本物の闇太郎という男が現れる。では記憶喪失の闇太郎は一体誰なのか…という展開でした。

 ミステリーと純愛に無差別殺人という時事性を絡めて、劇団☆新感線流に味付けしたという芝居でした。
 今まで見てきた新感線の芝居では、ゲストが主役で古田さんたちが脇を固めるというパターンが多かったので、主役を古田さんががっつり演じておられるのに珍しさを感じました。

 ゲストの堤真一さんは、天晴組の親分でもあり、闇太郎とお泪が子供のころ暮らしていた村で起きた一揆を壊滅させるための虐殺事件に絡むキーパーソンの役でした。なんといっても最後に闇太郎相手に舞台中を処狭しとくり広げる立ち回りが素晴らしく、堤さんで無ければこれほどの立ち回りをこなすことは難しいのではないかと思いました。ちょっとでも気を抜けば怪我でもしかねないほどの速さと手数。素晴らしかったです。

 お泪役の高岡早紀さんは、こんな女性に一途に思われたらどんな男性でもいちころだろうなというコケティッシュな魅力が溢れていて、それが演技なのかご本人の持っているものなのかは、私の目からは判断できなかったのですが、でもたくさん女優さんがいる中でもこのような雰囲気を持ってる人って、そうそういないよなぁと思いながら拝見しました。

 女形・銀之助役の勝地涼さん、男の姿をしているけれど実は立派親分の娘役の木村了さん。木村了さんはテレビでも女性的な役が多かったりするので、今回の舞台でもこんな複雑な役が回ってきたのかもしれません。今流行のBLを意識したカップルっていうことなのでしょうか。
 でも芝居の流れからいって、普通の男の子の役でも全然問題はなかったと思いました。 

2009年3月25日 (水)

二月花形歌舞伎

観劇日時…2009年2月8日
劇場…大阪松竹座

 二月花形歌舞伎の昼の部を見てきました。
演目は
一、歌舞伎十八番の内 毛抜
二、鷺娘
三、女殺油地獄

 "毛抜"はとにかくこれだけ若いメンバーが揃うと、朝一番派手に顔見せが出来る演目として最適な演目だったと思いました。
 主役の粂寺弾正役に中村獅童さん。たぶん私としては獅童さんを見るのは初めてだと思います。背が高く、化粧栄えがしてやはり歌舞伎役者の血を引いておられるなと思いました。ただ私が拝見した8日の時点で獅童さんの声がかすれていたのが残念でした。そしてまだまだ歌舞伎十八番の"毛抜"という芝居を引っ張っていけるほどの力があるとは言えないなと思いました。
 獅童さんは舞台の仕事だけに集中できるわけではなく、映像の仕事と両立させなければならないというハンディがありますが、将来骨太な武将役などがぴったりな役者さんに成長されることを楽しみにしたいと思います。

 "鷺娘"は中村七之助さんでした。七之助さんの憂いのある風情がこの舞踊にぴったりだなと拝見いたしました。大御所の役者さんが踊られる鷺娘はすでに成熟した色気があるのですが、七之助さんのは若さゆえの危うさ(踊りがではなく)で娘の精神が徐々に恋によって狂わされていく感じが分かり易く表現できていたのではないでしょうか。

 "女殺油地獄"、お吉役の市川亀治郎さんが今まで私が見てきたお吉の中で一番色っぽかったのではないでしょうか。
 着物の着付けも襟元をゆったりとさせており、与兵衛の着替えを手伝ったことで夫・七左衛門から叱責を受けて当然という気がしました。
 河内屋与兵衛役の片岡愛之助さんは、ラストの殺しの場に向かって悪い方へ悪い方へと自分を追い込んでいく与兵衛の姿を丁寧に演じておられたように思いました。
 そして最大の見せ場である殺しのシーンの迫力。伝説となっている孝夫さんと徳三郎さんの舞台もこんな感じだったのではないだろうかと思わせてもらいました。

 大変おもしろかった二月花形歌舞伎、これが松竹座毎年恒例の興行になってくれたらと願うばかりです。

2009年2月22日 (日)

泉鏡花の夜叉ヶ池

Panf2

観劇日・・・2009年1月31日
劇場・・・伊丹市立演劇ホール AI・HALL

 花組芝居としては三演目の「夜叉ヶ池」ですが、私としては初めての観劇となりました。
 小林大介さんが萩原晃を演じる那河岸屋組の方です。

 「夜叉ヶ池」は有名な戯曲なので、あらすじは割愛させていただきます。

 加納座長がパンフレットの座談会の中で「今回、晃と百合の役に関しては"継承"ということを意識しています。」と語っておられましたが、主役の2人だけでなく、湯の尾峠の万年姥・白男の鯉七・黒和尚鯰入を演じた若手3人にも花組芝居が着実に継承されていると思いました。

 白魚の鯉七役の美斉津恵友君の躍動感のある動き、万年姥役の谷山知宏君のお茶目なおばあちゃんぶり、黒和尚鯰入役の丸川敬之君は博徒伝吉役が回ってきたため、アドリブでおたおたしてるところを楽しませてもらいました。
 晃と百合の慎ましやかな生活のシーンから、夜叉ヶ池の眷属たちが現れるシーンへの橋渡しの上に、セリフの量が膨大になり、場を引っ張って行かねばなら無いという重要な持ち場を任されたことは、この3人にとって大変なことだったのではないでしょうか。

 若い谷山君の老婆役がなかなか良かったので、女形をやるときは老けが多くなるのかなぁと思ってしまいました。でも次に女形されるときは、どんな役に挑戦させられるんだろうかと楽しみになりました。
 
 主役の2人ですが、まぁこんなものかなと。本格的な女形を仕込まれた二瓶君ですが、自分の色が出てくるのにはまだまだ場数が欲しいと言ったところでしょうか。今後に期待したいと思います。

2009年2月 7日 (土)

劇団ファントマ 「ジョリー・ロジャー」

Jory_3 

観劇日・・・2009年1月12日
劇場・・・シアタードラマシティ

 
 ストーリーは16世紀大航海時代の海賊たちをテーマにしたものでした。

 "ジョリー・ロジャー"とは、黒地にどくろを白抜きにした一目で海賊と判る旗のこと。
 ただこの芝居ではこの海賊旗を作った人間がジョリー・ロジャーという名前で、シルバー、ゼロの3人で海賊として活躍していた。

 ダムストリームという強力な渦を発生させながら南下してくる海流に乗り、白鯨を引き連れて現れるグラスボトルアイランド。海賊憧れのこの島を見つけた3人は、果敢に挑戦したのだが、強力な渦に飲み込まれてしまい、遭難してしまった。

 なんとか生き延びたシルバーがシーグル・ウィーウィー号の船長となり、海賊を続けており、シルバー船長の男気に惚れた男たちが集まった。

 ある日、シルバー船長たちは波間に漂っている遭難者を引き上げる。その男はシルバーたちに襲い掛かるが、途中で力尽きて息絶えてしまう。この男はダイヤモンドで出来た剣とグラスボルトアイランドが描かれた古地図を持っていた。

 古地図にはギリシャ文字が書かれていたので、港の居酒屋の女主人からギリシャ語が読める男の子を買い取る。
 シルバー船長は、ダムストリームで遭難した経験があるので、なんとしてでも大船を手に入れたいと思っていた。そこで元神父の詐欺師・キットがフランス貴族に化け、英海軍の将軍を騙して、フリーゲート艦を手に入れようとする。

 フリゲート艦とダイヤモンドの剣を交換しようとしたのだった。しかし嘘がばれグラスボトルアイランド探しに英海軍も参戦する。

 ギリシャ文字の意味も判り、航海を続けるシルバー船長の前に白鯨の群れが現れグラスボトルアイランドが近くにあることを知る。そしてグラスボトルアイランドに上陸したシルバー船長たちは、古地図に書かれていた指示通りにグラスボトルアイランドの中を進んでいった・・・。

 初めて拝見した劇団ファントマなので、ちょっと手探り状態での観劇となりました。
 出演者も主演の上杉祥三さんやWAHAHA本舗の佐藤正宏さん、宝塚出身の日向薫さんなど多彩な顔ぶれを揃えたプロデュース公演だったというべきでしょうか。
 伊藤えん魔さんを含めて座長クラスの俳優が3人も揃う、それも小劇場系とはいえ少しずつ毛色の違う劇団の座長なのが面白い顔合わせでした。

 しかし海賊が活躍する冒険活劇という世界に私自身あまりなじみが無いので、作品自体にそれほど興を覚えるというところまでは行きませんでした。映画と違い舞台という空間で地球サイズの壮大な海や白鯨、巨大な海流を自分が想像できなかったからかもしれません。
 そして小劇場系の芝居となるとどうしても劇団☆新感線と内心比較してしまうのですが、劇団☆新感線ほど突き抜けているともいえず、あともう一歩かなぁという気がしました。

 さて作品の題名は「ジョリー・ロジャー」であり、ジョリー・ロジャーと名乗る人物も出てくるのですが、主役はシルバー船長でした。シルバー船長役の上杉さんは、昔取った杵柄なんていうと失礼かもしれませんが、演技にせよアクションにせよ、エネルギッシュでさすが夢の遊眠社出身と思いました。

 WAHAHA本舗の佐藤正宏さんは、英国認定の海賊でシルバー船長のライバルとも言うべきキャプテン・ヨーホー役。佐藤さんは手堅いです。

テレビでも舞台でもきっちりご自分の演技スタイルを貫かれていて、笑いを取るツボを心得ておられるし、海賊の船長らしく若い子達を引っ張っていくところなど拝見していても頼もしかったです。

 伊藤えん魔さんは、海賊を狙う賞金稼ぎなのに、文学好きで話が面白ければ、捕まえた海賊を放してやろうとするシーンをメインに出てこられました。そこで捕まえた海賊の首にカイロをぶら下げ、「水が欲しいなら話をせよ」と迫りながら、自分でがぶがぶ水を飲んでいくのですが、水を汲む少女が、水以外に怪しげなものを伊藤さんに飲ませていくというようなコントで楽しませてくれました。他の役者さんたちとあんまり絡みがなかったのはちょっと残念な気がしました。

 大英帝国海軍のワーズワース提督役の清水宏さんの癖のある演技も面白かったです。他の役者を飲んじゃう勢いでした。

 日向薫さんは居酒屋の女主人の役だったのですが、出番が少なくてもっと拝見したかったです。

 シルバー船長の腹心、元牧師の海賊キット役の萩野崇さん、今までイベントしか拝見してなくて、舞台での演技はどんなもんなんだろうと思っていたのですが、発声も動きもちゃんと舞台の寸法になっていて安心しました。初っ端にかなりの量の独白があって、ちゃんと全部しゃべれるのだろうかと、ハラハラもしてしまいましたが。気持ち良さそうに芝居していたのが何よりでした。

 ギリシャ語が読める少年ボニー役のTakuya君。おじ様ばかりの出演者の中でよくがんばってましたよね。テニミュネタがちらっと出てきた時客席が盛り上がってました。

2008年10月25日 (土)

花組芝居 「怪談牡丹燈籠」

Tirasi15_3

日時・・・2008年9月21日
劇場・・・新神戸オリエンタル劇場

「怪談牡丹燈籠」といえば、乳母が牡丹燈籠を手に提げ、下駄の音を響かせ、恋人の新三郎の元に通ってくるお露の話が有名です。
今回も花組芝居は原作に立ち返り、お露新三郎の話とともに、お露の父飯島平左衛門の話も絡んできました。

 飯島平左衛門は、かつて街中で酔っ払って暴れている浪人・黒川孝蔵を斬り捨てる。
 18年後、一人娘お露と女中のお米を柳島の別邸に住まわせ、自分は本宅に住んでいた。本宅には妾のお国がいたのだが、彼女は隣宅の次男・源次郎と通じていた。そして源次郎とお国は、平左衛門を釣りに誘い出し川に突き落として殺害し、源次郎が飯島家の家督を継ぐ計画を立てていたのです。
 その計画を聞いてしまった草履取りの孝助は、主君平左衛門の恩に報いるために源次郎を狙い始めます。

 源次郎たちが釣りに行く前夜、平左衛門宅に源次郎が泊まることになり、孝助は源次郎を槍で刺し貫くのでしたが、実は源次郎の着物を着た平左衛門だったのです。
 孝助は18年前に平左衛門に斬り殺された孝蔵の息子でした。そのことが分かっていたので平左衛門はわざと孝助に討たれるようにしたのです。
 平左衛門が討たれた事で、源次郎とお国は飯島家から逃げ出します。飯島平左衛門の思いを汲んで、平左衛門の仇を討つため孝助はお国たちを捜す旅に出るのでした。

 一方亡霊のお露が恋人の新三郎に逢いたくても、家の周りにはお札が張られ新三郎は金無垢の仏様を首からかけていたために近づくことさえできませんでした。それでお露たちは、新三郎の孫棚を借りていた伴蔵にお札をはがすように頼みます。そこで新三郎はお露に百両くれるならお札をはがしてやろうと持ちかけました。

 そこでお露たちは、飯島家から百両を盗み出し、伴蔵に渡します。百両を受け取った伴蔵はお札をはがし、金無垢の仏様を盗んでしまいます。そのため、新三郎はお露に取り殺されてしまいました。

 伴蔵はお露からもらった百両を手に田舎で小間物屋を始め、なかなか繁盛するのでした。しかし金が入ってきた伴蔵は飲み屋の女に入れあげて苦労させてきた女房を疎かにするようになっていくのでした。

 その飲み屋の女がお国だったのです。(あらすじはパンフレットを参照させていただきました。平左衛門とお露の話は互いに絡み合いながら進んでいくのですが、ここでは分けて書きましたので、実際の芝居の流れとは違っています、ご了承ください。)

 飯島平左衛門の話は、歌舞伎などにもよくあるストーリーで明治初めのころの日本人には理解し易いものだったのではないでしょうか。そして日本の怪談で唯一足のある幽霊・お露の話も昔からテレビで見てきたのでだいたいのストーリーは知っていました。
 ただ、お露・お米たちが伴蔵に百両ねだられて、幽霊なのに飯島家に盗みに入っていたことに驚きました。(私が子供のころ見た牡丹燈籠のドラマでは新三郎が死んだ後、判蔵がもらったお金がガラクタになっていたので、そういうストーリーだと思い込んでいました)

 花組芝居版怪談牡丹燈籠での中心はなんといってもお国・源次郎とお峰・伴蔵の二組のカップルだったのではないでしょうか。
 お露・新三郎という細い糸がこの二組を最終的に繋げていく因果の面白さ。お国を八代進一さん、源次郎を各務立基、お峰を加納幸和さん、伴蔵を小林大介さんという配役にしているところに、力の入れ方が感じられました。
 生活苦でお峰が内職してるシーンで、座長が次回公演のチラシを封筒に詰めている手際の良さに大笑いさせてもらいました。

 「金が因果の世の中」とは昔からよく使われる言い回しですが、お露の幽霊が盗み出した百両が新三郎の命を奪い、お峰たちや孝助の人生を狂わせていく、花組芝居で怪談牡丹燈籠の全貌を知り、三遊亭円朝が語るこの物語を実際に聞くことができた明治の人たちがうらやましくなりました。

 

2008年9月13日 (土)

第十八回 上方歌舞伎会

観劇日…2008年8月20日
劇場…国立文楽劇場

今年の上方歌舞伎会は、国立文楽劇場を平日にしか押さえられなかったため、仕事帰りに行ったので全部見られなかったことをご了承ください。

 「本朝廿四孝 奥庭」

 許婚武田勝頼が狙われていることを知り、勝頼のことを思って八重垣姫が祈ると、法性の兜に諏訪大明神の力が宿り、姫は狐火に守られながら諏訪湖を渡っていくというストーリーの舞踊。
八重垣姫は前半赤い振袖の衣装を着て人形振りで、後半狐の霊力が備わったときには赤い衣装を引き抜いて白の振袖の衣装になり人間の姿で踊るという趣向になっていました。
 公演後の指導者挨拶の中で、この人形振りは文楽人形遣い吉田文雀さんの指導をいただき、狐の人形も文楽の物を借りたとのことでした。

 八重垣姫を演じたのは、中村扇乃丞さん。上方歌舞伎会では毎回難しい役に挑戦されておられます。今回は人形振りということで、人形遣い役の人たちとの連携など、自分の踊りだけではなく気遣うことが多く、大変だったのではないでしょうか。
 
 「仮名手本忠臣蔵 七段目」

 あの有名な一力茶屋の場の大星由良之助といえば、座頭役者が演じる役で、芝居の上手い下手だけではなく、大名の家老職という風格や腹の太さが求められます。歌舞伎役者を生業にしている人たちでも演じることができる人は限られています。その大星由良之助役を演じたのは片岡佑次郎君でした。

 佑次郎君にとって、たぶんせりふを覚えるだけでも大変だったはず。芸暦9年。どう背伸びしても無理なお役、よくがんばりましたとしか言えませんが、きっと30年後にはこの経験が芸の肥やしとなってくれることを願うだけです。

 平右衛門役は片岡千志郎君。こちらも七段目の芝居を支える役なのですが、役的に千志郎君の持ち味に近いため、その役に奮闘する姿が平右衛門の必死の姿に重なって、好印象となりました。

 お軽役は當史弥君。たぶん上方歌舞伎会という勉強会でもこれほど重い役をするのは初めてかなと思うのですが、こちらも教えられたとおりこなすのが精一杯で、まだまだ余裕とか華やかさとかには、程遠い感じでした。まぁ、當史弥君もよくがんばりましたというところでしょうか。

 九太夫役の中村鴈大君。若いので精一杯の老人メイクだったのですが、ちょっと皺の色が濃すぎたかも。でも三枚目な感じもあり、なかなかよかったのではないでしょうか。

 指導者挨拶で片岡仁左衛門さんが教えるのに苦労したと仰ってましたが、さもありなんと共感いたしました。 
 上方歌舞伎会のメンバーにとってもう二度と舞台で演じることができないお役かもしれませんが、厳しい指導がいただけるのも期待されているからだと思って今後も精進していかれることを願うばかりです。